Introduction
フムフムポイント、教えて館長!
「住ムフムラボ」探訪
グランフロント大阪のナレッジキャピタル内に拠点をもつ「住ムフムラボ(SUMUFUMULAB)」。「家族」「防犯」「健康」など、住まいと暮らしにまつわる、さまざまな展示やクイズ、診断コンテンツなどを用意しています。この施設の魅力を、館長である佐藤 深雪さんに教えてもらいました。
まるで図書館!? カフェ併設で、ゆったりくつろげる。
ー 「住ムフムラボ」は、どのような施設になっているのでしょうか?

佐藤館長
「住ムフムラボ」は、3つのテーマでゾーン分けされています。それぞれのテーマは、時間や環境で変化していく家族のかたちを考える「かぞくのカタチ」。心身ともに健やかで豊かな時間を過ごすためのヒントを探す「いごこちのカタチ」。そして生きがいや居どころをつくり、楽しみながら暮らすことを考える「いきかたのカタチ」があります。


佐藤館長
そのほかに、蔵書をゆっくりと読んでいただくためのカフェ空間「住ムフムスクエア」や、真っ暗闇の空間で視覚以外の感覚を使ってさまざまなシーンを体験できる「ダイアログ・イン・ザ・ダーク『対話のある家』」など、暮らしや生き方のヒントが得られる仕掛けをご用意しています。


「住ムフムスクエア」は、3,000冊以上の住まいと暮らしの本や雑誌が自由に楽しめるブックカフェです。
ー たくさんのコーナーがありますが、それぞれのブースに共通する考えはありますか?

佐藤館長
すべてに共通していることは、色々な視点から住まいや暮らしのことを考えていただく施設ということですね。積水ハウスのカタログは少ししか置いていないので、たまに驚かれることもあるんです。
ー あくまで「学びの場」「共創の場」であるということなんですね。

佐藤館長
はい。とはいえ「学び」といっても堅苦しいものではなく、クイズ形式や診断コンテンツになっているものから、実際に触れたり臭いを嗅いだり五感を使って考えるものまで、気軽に体験しながら学んでいただくことができると思います。
ー 佐藤館長おすすめの「なかでもココは!」というコーナーはありますか?

佐藤館長
所長も前回お話をしていましたが、とくに暮らしにまつわる蔵書が充実していると思います。最新の雑誌から書籍はもちろん、専門書も充実しています。じつは積水ハウスは、長年出版活動も行っていたんです。「住まいの図書館出版局」シリーズは、本を通して住まいの歴史を探り、住みやすく愛せる街を創りたいという積水ハウスの気持ちから生まれたものです。
ー たしかに図書館の「暮らしコーナー」のような充実ぶりですね。

佐藤館長
お子様向けの絵本もたくさん揃えていますので、ご家族で図書館に立ち寄っていただくような気軽さでお越しいただけると嬉しいですね。


大人もグッとくる、遊び心ある子どもコーナー。
ー 子ども連れでも、気軽に足を運べそうです。

佐藤館長
施設内にはキッズスペースはありませんが、小さなお子様がいらっしゃるご家族もゆっくりと過ごしてもらえる“かぞくBOX”というコーナーを設けています。このコーナーは、子どもたちにとても人気がありますよ。

勾配が緩やかでカーペットの敷かれた大きな階段や、階段下の隠れ家的空間など、「子育ち」を実現する居場所が整えられています。
ー 2階がない、階段の空間がなぜか存在していますね。

佐藤館長
マンション暮らしのご家庭の場合、お子様が階段に接する機会が少ないといわれています。ここでは子どもが登りやすい階段の高さや、その下に隠れることができるスペースを設け、階段のある住環境において子どもたちがどのように動くかを知っていただく空間を目指しました。
ー 隠れられるスペースやのぞき窓はなんだか秘密基地っぽくてグッときますね。

佐藤館長
階段でジャンプするお子様の様子にびっくりされる方も多いですね。「階段ひとつで、こんなに遊べるんだ!」という驚かれる方もいました。あと、お子様人気ナンバーワンは「落書きタッチパネル」。器用にペン先や色を変えて、思い思いの絵を描いて楽しんでくださいますね。

落書きタッチパネルでは、大きなモニター画面に好きなだけ落書きが楽しめます。
ー これは夢中になりそう。

佐藤館長
そうですね。それぞれの展示は、なるべくお子様にも体験しやすいものになっています。
ー それぞれのブースには、どのようなコーナーがあるのでしょうか?

佐藤館長
家族で楽しめるものなら、「ラブ家事診断」もおすすめです。こちらは普段の生活で、お互いの家事の分担具合をデータで分析して理解できるというものです。カップルの方が結婚後を想定するのにも役立つと思いますよ!


「ラブ家事診断」は、夫婦やパートナーと一緒に質問に答えていくと、二人の家事分担比率が一目瞭然に。今後の家事について見直すきっかけになるかもしれません。
ー ラブ家事診断の上に飾ってある標語はなんでしょうか?

佐藤館長
これは「住ムフムラボ」の研究メンバーとともに作った「ライフコースかるた」です。自立期や円熟期など人生を4つの時期に分け、それぞれの生活で想起されることをかるたにしたものです。

暮らしや生き方、家族のつながりを“かるた”にしました。それぞれの活動期の中で、好きな絵札を選んでみてくださいね。
ー くすっと笑えるものから、背中を押してもらえるような言葉もありますね。構成員を含めて、家族のカタチがどのように変化していくのかが、まさに一目瞭然ですね。

佐藤館長
今やペットも大事な家族です。すぐ横の「もうひとりの家族」と題したコーナーは、ペットと幸せに暮らしていくためのヒントを設えています。こちらのコーナーで人気があるのは、この「犬・猫どっち」。
「寒がりで暑がりです」「物音に敏感です」といったパネルに対して、それが犬と猫どちらの習性なのかを当てるゲームです。

犬と猫の習性が書かれたパネルがずらり。それが犬の習性か、猫の習性か考えながら、パネルをめくってみましょう。
ー 今や、犬や猫を中心にすえた空間設計を行う家もありますよね。次のコーナーでは、かなり精密に作られたジオラマがありますね。

佐藤館長
こちらは人とまちのつながりをイメージして作られた「まちのジオラマ模型」。
模型では「おすそ分け」「ゴミ捨てマナー」「マラソン仲間」といった町に住む人の関係性がジオラマ化されています。「ウォーリーを探せ!」ではないですが、お子様にとっては解説パネルから模型の中の人を探すゲームとして楽しんでいただいています。
ー 「おすそ分け」や「ゴミ捨てマナー」のジオラマ……はじめて見ました。


佐藤館長
ジオラマでは、人と人の“つながり”を表していますよね。じつは積水ハウスの分譲地では、コミュニティづくりのお手伝いもしているんです。単に家というハードを売っておしまいではなく、暮らしの場で生まれる住民同士のコミュニケーションをいかにサポートできるかを考えています
ー ご近所づき合いが希薄化していると、よく言われますよね。

佐藤館長
そうですね。そこで、積水ハウスでは「ひとえん」と名付け、地域コミュニティの活性化はもちろん、生活サポートやイベント開催など、住民同士のつながりを育めるようなお手伝いもしているんですよ。それが地域の防犯活動にも役立ち、安心・安全な暮らしにつながっていくと考えています。

人との“つながり”を表現した分譲地のジオラマ模型。住民同士の関わりをどのようにデザインし、実践できるかを考えるきっかけに。
居心地の良さは、安心と安全からつくられる。
ー 次にやって来たブースですが、ソファや畳、座る場所がたくさんあってなんだか心地良いですね。

佐藤館長
まさにその居心地を探すためのブースです。この“いごこち”BOXという空間には、さまざまなタイプの座る場所があります。どこに座り、なぜその場所を選んだのか。人それぞれの居心地のいい場所を考えるきっかけづくりの空間です。
ー プロジェクターには、日本の四季の映像が投影されていますね。

佐藤館長
正確にいうと、八つの季節の映像です。
季節と共に過ごす時間や空間の心地よさを映像を通して「外とつながる住空間の魅力」や「日本の暮らしの豊かさ」など感じていただけると嬉しいです。
ー ゆるりした空間から一転、部屋の奥には防犯対策のコーナーがずらりと並んでいます。

佐藤館長
居心地は安全・安心という前提があって生まれるものです。家の防犯や防災のことも知っていただきたいと考えています。そのため、家を守るための方法や危険を知ってもらうヒントを数多く用意しています。
ー たしかに、居心地というとリラックスする空間ばかり考えがちですね。

佐藤館長
展示や体験を通じて「こんなところに危険があったのか……」と、防犯や防災についての意識を高めていただけるようなデータや情報を提供しています。たとえば、この「ドロボウ気分」は文字通り、泥棒側の視点から家のどこを狙うのか、どの場所が侵入しやすいのか、といった防犯の課題を知ることができます。実際に元泥棒の方にヒアリングしたデータをもとに制作されているんです。
ー 実際の泥棒へのヒアリング……説得力がありますね。


ドロボウの目線で町並みを眺め、狙われやすい住まいについてドロボウ自らが解説。お巡りさんも登場し、防犯のポイントもアドバイスしてくれます。

佐藤館長
その横にある「防犯クイズ」では、犯罪件数や手口など防犯に関する情報をクイズ形式でご紹介しています。防犯実験の映像などを通じて、防犯の知識を身につけることができます。ちなみに、下の画面に出ている問題、お分かりになりますか?

ー 泥棒に入られた被害件数ですか。10年前とそう変わらないのでは……2番の「約19万件」でしょうか。

佐藤館長
残念! 答えは1番の「約5万件」。この10年余りで約4分の1にもなっているんですね。知っているようで、意外と間違っていた知識に驚かれる方も多いです。
ー 減っているとはいえ、気を抜いてはダメですよね。

佐藤館長
防犯については知識だけに留まらず、実際のアクションに結びつけたいですよね。ちなみに、防犯といえば鍵。お出かけ先や仕事中に「鍵閉めたかしら?」と不安に思ったことはありませんか。
ー 数えきれないくらいありますね。

佐藤館長
そういう方には、ぜひ鍵のコーナーに訪れていただければ。こちらの鍵は、デザインで施錠したことを知らせてくれます。「ひと目で施錠状況がわかるため助かる」とおっしゃる方が多いですね。

施錠すれば、鍵の持ち手にあるオレンジの突起が盛り上がる仕組みなので、鍵の閉め忘れをしていれば一目瞭然になる仕組み。
ー 備えあれば憂いなし、ですね。

佐藤館長
備えといえば防災グッズです。こちらのパネルは「防災家族会議のすすめ」というもので、日常生活と防災のつながりを教えてくれます。下段には防災グッズの紹介もしているので、あわせてご覧になってください。

防災の参考となる課題やヒントをご紹介。日常のさまざまなくらしと防災とのつながりについても解説しています。
ー 今日の展示では「贈り物と防災」というテーマで、防災食品を紹介されていますね。

佐藤館長
はい。防災食品は、保存が効くぶん、買い替えのタイミングが難しいという声も多くありますよね。お歳暮などに防災グッズを贈ることも提案していますし、消費しながら備蓄するためのヒントもお伝えしています。
ー 次のコーナーは、不思議な機器が並んでいるコーナーですね。

佐藤館長
はい、こちらは五感を使って住まいの居心地を体験していただけるコーナーです。手に水を吹きかけて風を当てれば、サーモカメラの映像を通じてみるみるうちに手の温度が変わっていきます。住まいに置き換えれば、玄関先や中庭への打ち水。その効果をわかりやすく実体験していただけると思います。

「打ち水」は気化熱を利用して涼をとる、先人たちの知恵と工夫。実際に自分の手に水を吹きかけて、サーモカメラでチェックしてみましょう。
ー すぐ横のボックスは何でしょうか? 「においを比べてみよう」と書かれています。

佐藤館長
これは、住まいに使用される建材や壁紙のにおいを感じていただくためのもの。積水ハウスでは、空気環境に配慮した住宅を提供しています。だから化学物資のイヤな匂いがしないんです。ぜひお鼻を入れて体験してみてください。

一般の空間と空気に配慮した空間の違いを密閉したボックスに鼻を入れて嗅ぐことができる。
ー さまざまな木材と天秤が並んでいます。これはなんでしょうか?

佐藤館長
木の種類によって固さや重さが異なることを実感していただくためのスケールです。天秤を使って比べていただければ、一目瞭然のはずです。

樹種によって手触りや重さ、色、木目……その味わいはまったく異なります。実際に手で触れたり、天秤で重さを量ったり、自然素材の魅力を実感してください。
ー 同じ容積ですが、樹種によってまったく重さが異なりますね。

佐藤館長
生活のなかに木材が身近にあった世代の方は、木の特性をうまく使って暮らしていました。硬く重たいケヤキの木は梁や大黒柱に使うとか、粘り気のあるナラの木は曲げ木に使うとか。けれど、材木でつくられる私たちの家や生活の道具がどのような木材で出来ているのか、現在ではあまり意識されなくなりましたよね。
ー そうですね。じっくり材質の違いを触って比べてみるのも新鮮な体験です。

佐藤館長
お子様が楽しんで遊んでいますが、大人の方からもよく「販売していますか?」とお問い合わせいただくアイテムなんです。残念ながら販売はしていませんが、大人にとっても木材って惹かれるものがあるんだと思います。
シニアになるまで我慢したくない、住まいのアイデア集。
ー 最後のブースにやって来ました。こちらの空間はまたこれまでとは異なる雰囲気ですね。

佐藤館長
「いきかたのカタチ」をテーマにした空間で、アクティブシニアの夫婦の住まいをテーマにしています。30年・40年という時間を付き添ってきた夫婦ともなると、それぞれ自分の趣味を楽しむ空間がほしいという声もあるんですね。そこで「自分だけの居どころ」と題した個々の机を用意したり。あるいは、お子様やお孫様が集まった時に、大人数でくつろげる大きなダイニングテーブルの存在が嬉しかったり。
ー なるほど。机のあり方ひとつでも、暮らしのイメージが変化しますね。

佐藤館長
若い頃には意識しなかったものが、ある時、負担になる可能性もあります。たとえば、キッチンのシンク。「座りながら洗い物ができると楽だよね」という研究メンバーの方の声を反映し、実際にサンプルのプロダクトを作ってみたんです。シンクの横にスライド式のIHキッチンを備え、座ったままで洗い物をこなしたり、火を使えたりします。

研究メンバーの声を反映してできたキッチン。高齢者の負担を考え、座りながら洗い物ができ、シンクの横にはスライド式のIHキッチンを備えています。非売品。
ー このキッチン、老後に欲しくなりますね。

佐藤館長
来館者にもよく言われるのですが、残念ながら販売はしていないんです。人生100年時代と言われるなかで、豊かに暮らすためのアイデアを提供しています。
ー ブースの中に、突然、神社のような絵馬のスペースが現れました!

佐藤館長
絵馬は、リタイア後にやりたいことを願い事として書いてくださいとお伝えしています。

ー どういう意図があるのでしょうか?

佐藤館長
60歳から数えるリタイア後の20年間の自由時間(可処分時間)は、平均的なサラリーマンが会社員として過ごす労働時間と同じ「10万時間」になるといわれれています。
ー それは想像以上に長い時間ですね。

佐藤館長
本当に長い長い時間です。リタイア後の時間を、誰と、どこで、どう生きるか。重要なテーマですから、「こんな風に暮らしたい」という思いを絵馬にしたためていただきたいですね。絵馬は、毎年責任をもって、私が神社でお焚き上げをしていますから。

リタイア後の時間をどう過ごしたいか、生きがいや夢、やりたいことを絵馬に書いてみませんか? ほかの方の絵馬にもいろんな願いがあって、参考になるかもしれませんね。
ー 館長自らお焚き上げまで! さて、このテーマの奥にある部屋はなんでしょうか?

佐藤館長
こちらは積水ハウス×ダイアログ・イン・ザ・ダークの共創プログラムです。真っ暗闇の空間を舞台に、視覚以外の感覚や対話だけを頼りに行動するエンターテインメント施設です。感覚を研ぎ澄ますことによって、普段は気づかない住まいの価値を発見をしていただくことができると思います。

目以外のなにかで“ものを見る”。そんな体験ができる純度100%の暗闇空間ダイアログ・イン・ザ・ダーク「対話のある家」。目をこらしても見えない世界で感覚を研ぎ澄ましてください。
『住ムフムラボ』をさらに活用するならメンバーに。
ーブックカフェのようなおしゃれな空間の至るところに、暮らしを考える仕掛けが施されていましたね。

佐藤館長
フロア自体はそこまで大きくないのですが、実際にゆっくりご覧になるとあっという間に時間が過ぎてしまうと思いますよ!
ー 気になる本も多く、イベントだけで訪れるのはもったいないですね。

佐藤館長
そうですね。3000冊以上用意している本のセレクトにはかなり力を入れていますので、訪れるたびに発見があると思います。
またイベントも随時開催していきますので、そちらも合わせてチェックしていただけると嬉しいですね。住ムフムラボの研究メンバーにご登録いただくと、メルマガで情報をお知らせしますので、ぜひメンバーになってくださいね!
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佐藤 深雪
住ムフムラボ館長
1988年、積水ハウス入社。
総務部、広報部などを経て、2019年11月から現職。1988年、積水ハウス入社。
総務部、広報部などを経て、2019年11月から現職。