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平野 愛

平野 愛/写真家

その日の記憶を文字だけでなく写真と一緒に残せたらどれだけ素敵だろうか。 身の回りの「残像」を積み重ねていく楽しさを書きとめていきます。

第8回 「くらしの風景」を撮ること

 我が家のカブトムシは、おかげさまで地上に出てから寿命のマックス「2カ月と数日」をたくましくベランダで生きてくれた。さらに、6歳になった息子が淀川から持ち帰る数々の虫たち(バッタ、コオロギ、キリギリス)も盛々とベランダで生を謳歌していた(彼らは先日、故郷の淀川にお返しした)。

 このコラムを担当させて頂いて、執筆者のみなさんのコラムを読ませてもらうことで「いごこち」作りのスキルがあがってきたような気がする。
 そしてこの夏大きな出来事がもう一つあった。それは、スムフムラボで暮らしの写真撮影のお手伝いを、2回にわたり実施させて頂いたことだ。これもまた貴重で豊かな出来事となったのだ。

 1回目は6月18日の木曜日。【「くらしの風景」を撮る。平野愛のオシャレな写真塾】と題して頂き、編集者・江弘毅さんとのトークセッションからスタート。江さんはスムフムコラムでもおなじみの方。街の中にその身を置き、暮らしに独自の目で寄り添いながら、雑誌や書籍など数々のヒット作を生み出してこられた。
 そんな方を横にいったいどんなお話をしようかと、緊張と楽しみとで当日まで頭の中でシミュレーションを続けた。

 そこで考えたスペシャル企画が、本邦初公開「江さんの暮らしの風景」。江さんがいったいどんな空間で暮らしておられるのか、みんな見てみたいのではと思ったのだ。実は以前、コラムをはじめる際に江さんのお宅を撮らせていただけないかお願いをしてみたところ嬉しくもOKを頂くことができ、玄関からリビング、キッチンの隅々まで撮影させてもらっていたのだ。

 築40年近いマンションを数年前にリフォームされ、江さんと奥さんの本と音楽が詰まったリビングを筆頭に、画家の絵が壁そのものにダイナミックに描かれた玄関。食にまつわるこだわりが詰まったキッチンなど。「街的わが家」らしい、魅力たっぷりの空間だった。
 これはもう、うかつなタイミングではお出しできないな、と思っていたのだけれど今回のトークならば、と江さんにも許可をいただいてお見せすることになったのだ。
 その写真とともに、普段わたしがどんな風に家の写真を撮っているのかをご本人を前に解説させて頂いた。みながわたしと同じくらいに食い入るように写真を見てくれていたのが、とても嬉しかった。

©住ムフムラボ

Photo by Ai Hirano

Photo by Ai Hirano

 ここで伝えたかったのは江さんの家であろうと、我が家であろうと、撮影手法はほとんど変わらないこと。それをまとめたのが【「くらしの風景」撮影5つのポイント】


詳しくはこちらへ「平野愛のWEB写真講座」
https://www.sumufumulab.jp/sumufumulab/workshop/photo01

 いつだってこの順番で撮影をしていることに、いまいちど自分自身も確認する機会となった。それと同時に技術的なこと以外の大切なこととして、「いったい何を残したいか」をまず最初に意識することが重要とお伝えした。
 最後に江さんが「平野さんの写真にはミント系の空気が流れている」と話してくださったのが印象的。他にお話しすることはないくらい出し切ることができた、濃厚で幸せな1時間だった。



 そして2回目は7月11日の土曜日。【平野愛のスマホでOK撮影講座 素敵に撮ろう。「くらしの風景」写真。】と題した実践編を開催。午前の部と午後の部、どれもすぐに満席になるくらいの勢いに再び嬉しい気持ちでいっぱいに。それくらいみなさん「くらし」や「家」を撮ることに興味を持ってくださっているということに感激した。

 スマホでOKとしたのは、「そこにスマホがあるから」。今や「スマホ」は切っても切れない縁。高性能化し、例えばiPhoneなど、標準で搭載されているレンズが29mm相当という空間撮影にはもってこいの広角レンズ。これはうまく暮らしに導入して、気軽に残していくことも薦めたいからだった。
 実際わたしも息子が生まれてからは両手を使えないときはさっとスマホで撮影することが増え、それが意外に楽しかった。

 先にあげた5つのポイントをもとに、実践編は実際にスムフムラボの一部分を舞台にして、3名~4名のチームに別れてエリアごとにスタイリングから挑戦して頂いた。あえて適当に置いておいた食器や本、雑貨などを多すぎず少なすぎない分量で配置。これがまたなかなか大変。
 だけどはじめましてのみなさんでも一緒にとにかくその場をなんとかしないといけないということで、チームワークが育まれてとてもよかった。


©住ムフムラボ

 最も上達を感じたのはポイント2の「正面を見つける(構図)」だった。縦と横のラインを意識してサイドが歪まないようにスマホやカメラをうまく角度調整すること。これを実際におひとりおひとりに特訓することで、30分以内に全員がコツをつかまれてあきらかに写真が“素敵に”整っていったのだった。
 これにはさすがに大きな手応えを感じ、思わず現場でニヤニヤしてしまった。

 そうして身につけた技術をもとに、実際に家に帰って改めて撮って同時開催していたSUMUFUMULABフォトコンテストにエントリーされる方もたくさんおられた。そこに写し出された写真は明らかにくらしがいきいきしていたし、何より撮り手が楽しんでいる気持ちが伝わってきた。

 それから一週間後、参加者のお一人からこんなメールを頂いた。一部抜粋させて頂く。

−−−−くらしの風景、昔は庭先で写真をとることもありましたが、近頃は出掛けた先で撮ることが多く、なかなか住まいの記録は意識していないと残らないですね。
今回は短い時間で端的に室内撮影のポイントを教えていただき、とても参考になりました。
 この前UP出来なかったものも含めてまた「わが家の風景」投稿しようと思っています。


 そうなんだ。スマホが普及したとはいえ、くらしの中で写真を撮るっていうのはまだまだ旅先や出かけた先で撮ることが主流。多くの人がそうだと思う。まさにこの全2回のトークとワークショップで伝えたかったのはここだったのだ。
 旅先の写真ももちろんいいけれど、何気ない暮らしを「風景」と意識することは、できそうでできない。だから意識するきっかけとなってもらえたらと思った。

 かくいう私は、我が家のくらしの風景を、さながら庭園のように、新たに手を加えていこうと画策している。息子の成長、働き方の変化などなど、新たな家作りが必要になってきたのだ。
 さて、どんな風に我が家の風景を変えていこうか。一瞬一瞬の風景を、これからも残していけたらと思う。


©住ムフムラボ

 スタッフのみなさんと。背後には「くらしの風景」写真を展示してくださっていた。

 ご参加くださったみなさん、スタッフのみなさん、ありがとうございました!

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