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平野 愛

平野 愛/写真家

その日の記憶を文字だけでなく写真と一緒に残せたらどれだけ素敵だろうか。 身の回りの「残像」を積み重ねていく楽しさを書きとめていきます。

第6回 ずうずうしく、いごこちよく。

 昨年末のこと。別のお仕事なのだが、当コラムでご一緒させて頂いているミシマ社の三島邦弘さんを撮影する機会を頂いた。毎回コラムを楽しみにしていた一読者として、願ったり叶ったり。なにせ、「家が職場、職場が家」にはじめて潜入できたのだから!

 そこは確かにコラムに書かれていた通り、 〝どっからどう見ても、「家」にしか〟見えなかった。

 靴を脱いで縁先から入るようなスタイルで、床は畳にこたつ。たくさんの本棚とふすまに囲まれた昔ながらの日本家屋。隠し扉のようにひとつのふすまがパっと開いて、どうぞどうぞと階段を上がりながら2階に招いてくださる三島さん。事務所スペースになっているお部屋を通過して、どうぞどうぞと入れてくださった床の間のあるお部屋。さらにはどうぞどうぞとほんとの隠し扉をあけて、不思議な屋根裏部屋まで案内してくださった。

 仕事場っぽかったのは、スタッフのみなさんの机が並んだ一部屋くらい。床の間のある部屋ではちゃぶ台を囲んでお話をうかがった。いごこちがよかった。よい写真がたくさん撮れた。

 そう、いごこちがよいことは「よい写真」に繋がる。わたしの場合、それは結構顕著に現れるみたい。

 特にこの10年は住まいの写真をかれこれ数百件ほど手がけていることから、それはもう強く思う。なにせ初めましての方の家に伺って、クローゼットや寝室まで入らせてもらうのだから。ずうずうしいにもほどがある。だけど、そのずうずうしい状況にみなが「いごこちよく」居れた時、よい写真が生まれてくるんだって思い続けてきた。

 じゃあ、どうやって「いごこちよく」居れるようにするのか。それは時と場合と人によるというのは当たり前ながらも、一つ決まってきたのは撮影ルート。

 まずは玄関からスタート。玄関周りはそれほどみな抵抗がないから、そこで撮影の雰囲気に慣れてもらう。自分も相手もウォーミングアップ。それから、水回り。洗面所は早い段階で向かい合える。次にキッチン、ダイニング、リビングへ。そうしてじょじょにプライベートスペースに向かっていくというルートはどうやらいい感じ(そうそう、トイレは水回りといえども、最後の方がいい感じ)。

 もうひとつは、撮影に巻き込んでいくこと。家の人が、逆にお客みたいになったらダメだなって思うのだ。いつもどおり居てもらうように心がける。ちょっと物を一緒に動かしたりしてもいいし、いっそ寝転んだりテレビ見たりしておいてってくらいに思う。その一連を長過ぎず、短すぎず、だいたい2時間ほどで終わるようにして、あとはゆっくりお茶してお話して帰る。それがわたしの住まいの撮影スタイルだ。

 さあて、そんな事を言っていると、今週末はわが家のリビングを舞台に撮影される案件が出てきた。今度は撮られる側だ。人もたくさん来る。ずうずうしく、ぐいっと入ってきてほしいものだ。そしたらきっと自分もいごこちがよくなるし、きっとよい写真も生まれるに違いないから。

 思いがけず今回のコラムは「住まいの写真撮影講座」みたいになったが、なんと先ほど住ムフムラボから「写真講座を企画しませんか?」というメールが入った! なんというタイミング。これはまた願ったり叶ったり。住まいの写真。撮り方一つで豊かな記録になる。
 そんな世界を読者のみなさんと一緒に体験できたらいいなと思う。

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