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橘 真

橘 真/甲南醸造所倭文土井農園経営

淡路島で農業に従事するかつての名ソムリエが、 日々自然を相手に時間をかけて農作物を育てることの楽しさ困難さ、喜怒哀楽をコラムにのせて。

第5回 境界線とこちら側 1

 境界の往来を担う者、それはコミュニティーにとって、「ここに含まれる」という、コミュニティーの重層的な体系において活性になる。
 境界の往来を担う者は、その「往来する」という事実によって境界を消す。
それはそもそもの、コミュニティーの解体を意味する。
 しかしそれは、「ここに含まれる」というコミュニティーからの共通の「合意」が、「ここ」を支える「総意」として、要請した契機でもある。
「総意」とは「無意識」である。
 越境者はコミュニティーの、変容する「何か」を象徴的に補償する。
 我々とは、無意識に支えられた、その「構造」である。

「越境する者」の持っている「活性と解体」の鋭利な両義性は、全てを破壊する可能性を孕んでいると同時に、コミュニティーの未だ見ぬ、未来の形への、可能性を担保している。
 僕には今、過剰に扱われる「食」を「契機」として、
 コミュニティーそのものでもある「農業」の「活性と解体」が、「総意」として要請されているように見える。
 それは、現代において「機能」として矮小化された「農業」が、我々、「構造」を蝕んでいく、大写しの「画」である。

 仮に一家4人の食費を、一人当たり一食¥300で算出すると、
¥300×3食×4人×365日 = 1,314,000 
 なので、このうち例えば90%を自給できれば、
 1,314,000×90% = 1,182,600
 という様に、年間 ¥1,182,600の家計が浮く計算になる。
 という訳で、今回は自給自足の農業の話です。

「自給自足農業」「年間¥1,182,600の食費が浮く」
 というふうに言えば、いい事尽くめですが、
 例えばその食事の内容を、一家4人、1日三回、くる日もくる日も、ご飯と味噌汁と漬物(と野菜)だけでいくとする。
「求道的」でハードボイルドある。
「精進料理」とか、「ベジタリアン」とかに、に少し言い換えたほうがいいような気がする。

 内訳は、
主食の「米一合」の重さは約150gなので、一人一食一合として、
0.15×3食×4人×365日 =657kg
 米の反収を8俵(60kg×8 = 480kg)として、精米率70%(336kg)とすると、
必要な面積は 657/336=1.95(反)

 味噌汁用の味噌の量は、おおよそ一食大匙1杯(16g)として、
  0.016×3食×4人×365日 =70kg
 吸水前原料66%として、おおよそ算出すると、
麹(米)21kg、生大豆16.8kg、(1:1.25)、塩8.4kg (12%) 
 このうち、麹用米を主食用生産面積に加える。(後述)
  657+(21/0.7) / 336=2.04(反)

 野菜は例えば、農水省の1日の摂取量指針は350gであるが、
ほかに食べるものがないので一食200gとして1日あたり 600g。
年間では200g×3食×4人×365日=876kg

 以下は生産面積と作付例。
 野菜作付面積 例 14.4×27.8 = 400㎡=4畝(うね)= 0.4(反)
                     14.4m

 縦軸の12は月、横軸の12は畑の横幅14.4mが12等分されているのを示している。
 1畝の幅が1.2mなのは便宜的にトラクターのロータリー幅なので、機械の都合に合わせる。
 例えば横軸1の12ヵ月を表で追うと、1,2月が休眠、3月に「菜類」を播種して、4月5月にかけて順次収穫、6月休眠、7月に大豆の播種、11月に収穫、12月は休眠、というのを表している。
「ねぎ」がいる、とか「トマト」「南京」食いたい、等であれば、作柄が似たところに適当に組み込む。

●大豆(味噌用)
1条あたり、畝27.8mに株間15cmとして27.8/0.15=185本
1畝あたり、(天80cm)につき、60cm間隔の2条植えとして、185×2=370本
1本あたり着莢数30、粒数1.5、100粒重25gとすると、
370×30×1.5×0.00025=4.16kg(上図の1畝)
6畝で25kg、年間16.8 kgの149 %賄える。 

●野菜
菜類(小松菜)
1条あたり、畝27.8mに株間15cmとして27.8/0.15=185本
1畝あたり、(天80cm)につき、15cm間隔の5条植えとし
185×5=925本
2畝で1,850本、平均50gとして、1,850×0.05=93kg

法蓮草
1条あたり、畝27.8mに株間15cmとして27.8/0.15=185本
1畝あたり、(天80cm)につき、15cm間隔の5条植えとして
185×5=925本
1畝で925本、平均35gとして、925×0.035=32kg

白菜
1条あたり畝27.8mに株間50cmとして27.8/0.5=55本
1畝あたり、(天80cm)につき、50cm間隔の2条植えとして、
55×2=110本
2畝で220本、平均1.5kgとして、
220×1.5=330kg

蕪、大根
1条あたり、畝27.8mに株間平均25cmとして27.8/0.25=111本
1畝あたり、(天80cm)につき、25cm間隔の3条植えとして
111×3=333本
2畝で666本、蕪平均100gとして、
666×0.1=67kg
2畝で666本、大根平均350gとして、666×0.35=233kg

人参
1条あたり畝27.8mに株間平均20cmとして27.8/0.2=139本
1畝あたり、(天80cm)につき、25cm間隔の3条植えとして
139×3=417本
1畝で417本、平均100gとして、417×0.1=42kg

玉葱
1条あたり、畝27.8mに株間15cmとして27.8/0.15=185本
1畝あたり、(天80cm)につき、15cm間隔の5条植えとして
185×5=925本
2畝で1,850本、平均100gとして、1,850×0.1=185kg

茄子、瓜類
1畝あたり、畝27.8mに株間70cmの1条植えとして27.8/0.7=39本
1本あたり着果数30、
平均果重、茄子70gとすると、
39×30×0.07×=82kg
平均果重、瓜類70gとすると、
39×30×0.07×=82kg

里芋
1畝あたり、畝27.8mに株間50cmの1条植えとして27.8/0.5=55本
1本あたり着数60、平均芋重30gとすると、
55×60×0.03=99kg

馬鈴薯
1条あたり、畝27.8mに株間30cmの1条植えとして27.8/0.3=92本
1本あたり着数10、平均果重75gとすると、92×10×0.075=69kg
2畝で69×2=138kg

野菜合計 93+32+330+233+42+185+82+82+99+138 = 1,316kg
上図で876kgの150%を賄える。 

 作業時間を次表で算出すると、
 野菜、上記一畝一作(例えば春播き蕪)の標準   (反 / 480h)

 16h×12畝×年2回 = 384h
 通常の野菜生産では、収穫、調整、出荷の作業時間割合がきわめて大きい。
 上記は自家利用なので、収穫、調整、出荷の作業時間は全体の25%
(管理、除草は時間短縮のためにビニールマルチを導入する)。

 米は手順による時間差が大きい。
 以下は、育苗箱よるプール育苗、耕起整地はトラクター、定植は乗用田植え機(リース)、収穫はバインダー、乾燥は稲架の天日干し、ハーヴェスターで脱穀(構造改善された農地でコンバインと乾燥機を使えば、時間は大幅に短縮する)。
反あたりの米の標準

 30h×2.04 = 61.2h

 以上により年間の作業時間は    61.2+ 384 = 445.2h
 一日の労働時間6hとすると、    445.2 / 6 = 74.2日
 単純に12ヵ月で割ると       74.2 / 12 = 6.18
 という事で、もちろん農繁期はあるが、平均月 / 6.2日労働で賄える。

 生産経費の考え方は、露地栽培の自家利用なので、設備、機械の償却は考えないとすると、通常の経費の最大の項目である調整、出荷のコストが0なので、
必要な経費は、主に種苗費、肥料費、資材費(ビニールマルチ)、燃料費、である。

 種苗費は、労働時間が増加するが、在来品目の種取りを導入するとコストは下がる。

 肥料は通常の生産では、栽培指針どおりにほとんど盲目的に投入するが、自家利用では出荷基準がないので、本当は何がどれぐらい必要なのか、観察しやすい(一定量必要な場合、当地ではちなみに鶏糞は、ローダーを使って自分で軽トラに積むのなら無料で斡旋してくれる所がある。ただ、乾燥しているだけですぐには使いづらいので、畑に野晒しにするなど、少し調整する必要がある。また、養豚場から出る、質の良い醗酵堆肥は、軽トラ一杯で¥1,000である。鶏糞や豚堆肥はそれぞれ成分が違うので、作目の生育を観ながら使う)。

 ビニールマルチは、とくに作物に生理障害や病気が出なければ、張りっぱなしで問題はないと思われる(上記圃場に全畝張ると、両端の余裕を見て350m程度必要なので、例えば0.03×135×200mだと2本で¥7,000〜9,000程度)。

 燃料費は軽トラ、トラクター、草刈り機、チェーンソー等の、機械の使用を中止しなければ削減できない(方法によっては、生産性を犠牲にして機械や資材を使用しないという選択も、もちろんある)。

 以上のような形で、例えば自給目標の¥1,182,600のうち、
 経費10%(年間¥118,260)で収まれば、
 445.2h(平均月 / 6.2日労働)で¥1,064,340生産した(稼いだ)事になる。
 (時間当たり¥2,390)


 どうでしょうこの数字、何かここに「未来への可能性」は含まれていないであろうか?

「自給自足」というのは基本的に「閉鎖系」なので、「農業」の本質である「重層性」や「開放性」から切り離されており、そういう意味ではどこまでも「家庭菜園」なのであるが、上記は、「みんなが家庭菜園をすれば、どうなるか?」の基礎資料を目指している。
 例えば、平均月 / 6.2日労働を18.6日労働に増やすとどうであろう。
 そうすれば単純に、12人の食料を生産できる(この内容でよければ、であるが)。

 しかし、たまには「肉食いたい」や、家庭によっては、
「小さな子供もいることだし」ということになると、こうも言っていられない。
 もちろん当然です(それに人権として、憲法に抵触する恐れもある)。
 という訳で、次回は「どうやって肉を食べればよいのか? 養鶏と狩猟」に続く。

 付録として、
 上記の米換算してある味噌用麹は、米を味噌屋さんに持ち込んで麹加工してもらうと、
 一升(1.5kg)¥850(当地A商店)で
 ¥11,900(麹中の米75%とすると実際は¥9,000)程度。

 塩は仮に㎏/¥300とすると
 8.4×300 = ¥2,520
 塩はちなみに1997年に専売制度が廃止されて規制が撤廃されているので、
自家消費であればとくに手続きを経ずに海水から作ることができる。
 上手く精製すれば8.4kgなら、農業用の500ℓのタンク一杯の海水で足りる。
(おそろしく手間はかかるが)

 味噌汁のだしは、シイタケであれば自給できる。
(原木D 100mm×90cm 10本分でオガ菌¥1,000程度)
 原木は、周辺の里山整理で入手が容易な「ウバメガシ」
(ばべ)であれば、ちなみに当地では無料で手に入る。

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