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小林明子

小林明子/ライター

物心ついた時から家には動物がいて、ペットというより「家族」だった。 一緒に暮らすのは大変だけど、意外な発見の連続で離れられなくなる。

第28回 ヒトも猫も、ウイルスへの「備え」あれば!

 テレビでも新聞でも、仕事場でも、新型コロナウイルスの話題で持ち切りだ。もちろんわが家でもできることはしようと決め、実行している。そもそも私と息子は潔癖症気味なのと、ほぼ年中なんらかの花粉に反応する身の上ゆえ、外出時にはマスクが欠かせない。室内では空気清浄機を24時間稼働させている。

 帰宅後の手洗いとうがいも必ず行っているし、免疫力を上げると言われる個配の乳酸菌飲料も毎日飲んでいる。そんないつもの習慣をさらにレベルアップさせたのは息子の一言だった。

 港に着岸した外国籍のクルーズ船から次々に感染者が出始めた頃。その様子をニュース番組で見ていた息子が「これって、人間以外にはうつらへんのかな」と呟いた。
「え? どういうこと」と聞き返すと、
「猫とか犬とかにうつらないのかなって意味。ウイルスは変異しやすいから」と言う。
 彼は大学の卒業研究に遺伝子関連のテーマを選んだぐらいだから、門外漢ではない。何となく不安になってきて、動物とウイルスの関係について調べてみた。


 猫も風邪をひく。その原因となる病原体は、ウイルス由来、細菌由来などがあるが、よく知られているのは『猫ウイルス性鼻気管炎』。一般的には猫風邪と呼ばれるもので、くしゃみや鼻水が主な症状だが、体力の落ちた猫や子猫は命を落とすこともある。

 戸外で暮らす猫に比べて、室内飼いの猫は感染症のリスクは低いが、それでもゼロではない。飼い主が戸外で野良状態の別の猫を触るなど、何らかの形で手や持ち物についたウイルスや細菌を持ち込む可能性もあるからだ。

 猫の唾液には殺菌成分が含まれていて、しょっちゅう体をなめるのはその効果を持続するためだとも聞くが、命に係わる成分まで滅することは難しいだろう。そのため、わが家では愛猫に接する前には必ず手洗い。服も着替えてからスキンシップを取るように心がけてきた。

 では、逆に猫からヒトにうつることはあるのだろうか。インフルエンザは、猫からヒトに感染した事例が2016年に海外で報告されている。H7N2型のインフルエンザウイルスが猫に感染。それがヒトに感染したのだ。ただ、現実的には猫がインフルエンザに感染するリスクは極めて低いといわれている。

 新型コロナウイルスについても、アメリカ獣医師会や世界小動物獣医学会が見解を発表している。曰く、犬や猫もコロナウイルスには感染するが、“種の壁”を超えては感染しないため、ヒトから猫、猫からヒトへの感染はないとか。つまり、猫のコロナウイルスは猫間でのみ感染し、新型コロナウイルスはヒト間でのみ感染するということだ。

 東京都獣医師会に所属する医師は「新型コロナウイルスが、犬猫含むペットに感染したという報告は一切ありません」としながらも、「どんなウイルスでも進化する可能性がある。その意味では、感染の可能性を完全に否定することはできないが、現時点ではペットに感染するとは考えていない」と見解を述べている。

 やはり息子が指摘した変異がポイントになりそうだと思っていたら、2月末に香港で新型コロナに罹患したヒトが共に暮らしていた犬から、新型コロナの陽性反応が弱いながらも確認されたとの報道がされた。
 直ちに、東京都獣医師会は「犬が感染したことを確認したわけではない」とする見解をホームページに掲載。飼い主から犬や猫に感染する可能性は非常に低いと考えており、まずは飼い主が感染しないよう注意しながら適切に対応しましょう」と呼び掛けている。
 日本獣医師会も同様の見解を出しており、「犬の鼻と口の粘膜にたまたま付着したウイルスを検出してしまった可能性が否定できず、犬の体内でウイルスが増殖したかは確定していない」としている。

 ネットなどでは、動物~ヒト間の感染はないようであることを安堵しつつも、「自分だけでなく家族も感染してしまい、数週間入院を余儀なくされたら、うちの犬や猫は誰が面倒を見てくれるのだろう。感染者と共に暮らしていた動物のケアなんて、喜んで引き受ける人はいないのでは」との声も上がっている。
 だからこそ、ヒトが罹患しないように細心の注意を払わねばならないと思っている。


 目には見えないウイルスにどう対峙すればいいのかわからないことだらけだけれども、アンドレとモックの平穏な毎日を守るためにも私たちが倒れてはならない。やれることはすべてやろう、と決めたのはそのためだ。
 “アンドレとモック”の部分を“小さな子どもたち”や“お年寄り”に置き換えれば、どの家庭も状況は同じ。様々な命を守る行動、それが今求められている。高齢者や基礎疾患持ち以外は軽症だとタカを括る人もいるが、未来は誰にもわからない。

 マスコミに登場する専門家や評論家は批判するのが仕事。誰もが好き勝手を言うが、ではどうすべきかは語らない。そもそも無症状でもウイルスが排出される未知の存在に打つ手があるのかどうか。国の施策はお世辞にも上手くいっているとは思えないし、小中高校の一斉休校にも賛否はある。経済活動への懸念も思いっきりあるが、やはり、「集まらない」「不要不急の外出は控える」のが最良の方法だと、中国武漢からは発信されている。

 息子の大学の卒業式も中止になった。セレモニーをあまり好まない彼にしては珍しく「学生生活の最後になる卒業式には出たかったなぁ」と呟いていたが、すぐに気持ちを切り替えたようだ。感情的になっても仕方ないと判断した姿に、成長が感じられた。

 私の仕事にも影響が出ている。セミナーやイベントが相次いで中止されたため、その分見込んでいたギャラが消えた。我々フリーランスは仕事が完了できなければ1円ももらえない。キャンセル損害料などもないし、国の補償の網からは多分漏れるだろう。雑誌の特集などにも影響が出る。収入激減になるのは目に見えている。

 でも、元気でさえあれば働ける。経済的損失もいつかは取り戻せる(と思いたい)。外に出られないことを悲観的に考えるのではなく、部屋を模様替えしてみる、食器棚を整理整頓する、子供と思いっきりコミュニケーションを取ってみる、買っただけで積んでいた本を片っ端から読むといった、時間がない時にはできなかったことができるとむしろ前向きにとらえたい。そうすれば免疫力も上がるのではないだろか。


 いま、わが家では玄関から洗面所と風呂場があるエリアをレッドゾーン。リビングダイニングとキッチン、私の仕事場があるエリアをグリーンゾーンに設定している。帰宅時には玄関前で衣服を叩き、入室後は玄関横にある洗面所に直行。小指にマスクの紐をひっかけて外し、蓋が閉まるゴミ箱に捨ててから服を着替える。
 そのまま、息子が実験前に行っていると教えてくれた、爪と指の間や指の又、甲や手首も念入りに洗った後、流水で15秒間以上すすぐ方式で手洗い。続いてうがい。1回目に含んだ水は口の中でブクブクしてすぐに出す。2回目にのどの奥をうがいする。
 洗顔も済ませてから、扉やドアノブなどを消毒液で拭いて、ようやくグリーンゾーンであるリビングに向かう。細菌などの温床になりやすい玄関の床も定期的に消毒する一方、アンドレとモックはグリーンゾーンから出さないことを厳守。アンドレとモックは「前は行き来自由だったのに、なぜ~~」と、目で鳴き声で訴えるが、心を鬼にしてグリーンゾーンに追いやっている。

 スーパーの棚からトイレットペーパーやおむつが姿を消しているとの報道を見て、オイルショック騒ぎを思い出した。当時、小学生だった私と妹は母に連れられ、個数制限がされていたトイレットペーパーや砂糖(なぜ砂糖だったかは今もってわからないが)を買う列に並ばされた。それらは1人1個ではなく1家族1個だったようにも思うが、だからこそ母は子供にお金を持たせ、家族ではなく他人を装わせたと思う。
 妹の手をつなぎ、母の後ろに従い帰る道すがら、罪悪感を抱くべきなのか、商品が手に入った勝利感に酔うべきなのか、すれ違う人の視線が気になった記憶がよみがえる。妹は「全く覚えてもいないし、結果的に多めの品が買えたんなら良いやん。そんなこと、いまだに気にする神経がわからんわ」と中途半端な正義感をふりかざす私のことをからかうが、今やそれも笑い話。

 そんな風にいつの日かこのコロナ騒ぎが“思い出話”に変わることを、晴れ晴れと笑いながら外出して、気持ちよくレジャーを楽しめる日が一日も早く来ることを願っている。その頃にはアンドレとモックも部屋を自由に歩き回れるようになっているはずだ。

お母さんたちが守ってくれるから、外の世界の騒ぎなんて知らないニャ~ン。
お母さんたちが守ってくれるから、外の世界の騒ぎなんて知らないニャ~ン。

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