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小林明子

小林明子/ライター

物心ついた時から家には動物がいて、ペットというより「家族」だった。 一緒に暮らすのは大変だけど、意外な発見の連続で離れられなくなる。

第13回 目も手も、口ほどにモノを言う。

 犬でも猫でも、共に暮らすと「この子は言葉がわかる」という感覚を多くの人が抱くようだ。
 うちのシャンコも「膝に乗りにおいで」「ご飯入れたから食べや」「お風呂入る?」。私が発する言葉の多くを理解し、言われた通りの行動を取るのだが、面白いのは返事もするところだ。

「お腹すいた?」と聞くと「ぐわん」(ご飯と聞こえなくもない…)。
「眠たいのん?」と聞くと「うーん」。
「ただいま~」と扉を開けると、「ぎゃん、ぎゃーん」。
 時々で鳴き声を変化させるので、親バカな私なぞは会話しているかのような錯覚に陥ってしまう。

 空前の猫ブームといわれる昨今。なんと、猫と会話できるアプリがあるというネット記事を先日読んだ。4種の猫の声が登録されていて、イタズラを戒めたり、ご機嫌伺いしたりすることができるとか。ふーん。
 でも私とシャンコは心が通じ合っているから、そんなアプリには頼らない!つもりである、今のところは……。

 動物行動学の見地からすると、会話しているかの錯覚に陥らせる行動は、動物が学習している結果なのだとか。
 「ぐわん」と鳴いてみたらご飯がもらえた。逆に、人間が発する「おいで」という言葉の響きを覚えて、膝の上に乗ったら撫でてもらえた。あるいは足をスリスリしたら抱き上げてもらえた。いわば反射行動のようなものらしい。



 さて、今やお腹を痛めて生んだ実の子たちよりも可愛がっていると断言できる、愛猫のシャンコが我が家に来たのは、2001年の11月。手のひらに乗る大きさだったから、誕生日はひと月前の10月中旬だろうか。
 とすると、シャンコはすでに満14歳。この秋には15歳になる。人間に換算するとなんと72歳。15歳は76歳に相当するとか。
※花王「猫を知る~愛猫との暮らしに役立つ情報サイト~」より
http://www.kao.co.jp/pet/cat/jiten/category01/002.html


 私の年齢をいつの間にかはるかに超えていたシャンコ。元々、おしゃべりで自己主張の強い子だったが、歳を重ねるとともに、さらにワガママになってきたような。
 いや、有り体に言えば、厚かましいオバサン化してきている気がする。

 たとえば、お嬢様時代のシャンコは、好物のヨーグルトやパンがもらえるまで、潤んだ瞳で黙って見つめ、大人しく待っていた。が、今は違う。
 食卓に無理矢理上がり、前脚を何度も繰り出して、好物を自分のところに引き寄せようとする。食卓から下ろしても、懲りずに何度も上がってくる。

 そりゃ私だって結婚前は大人しいかのようにふるまっていた、気がする。でも母になってからはそれなりに厚かましくなった。
 と、自戒を込めつつ思うが、シャンコの眼はまさに獲物を狙うハンターだ。



 私は、カーペットの上に回転&リクライニング式の座椅子を置き、座卓上のパソコンに向かって仕事をしている。起きている時間の7割以上がその状態で仕事をしているのだが、シャンコはそんな私の膝の上に乗りたくて乗りたくて仕方ない(実はたった今も乗っている)。

 けれども、シャンコが膝の上に来ると、はっきり言って邪魔。パソコンが打ちにくくなるし、片腕を枕にされようものなら、残った片手で入力せねばならず、効率の悪いこと甚だしい。

 ゆえに、シャンコが膝に乗りに来ないよう、なるべくブロックするような姿勢を取っているのだが、敵もさる者。座卓の足元から潜るように頭をこすり付け、無理矢理でも膝に乗りに来る。
 寒い季節は暖房がわりになるので、4キロ近い重さに耐えつつも、まぁ良しとしているのだが、夏はたまったものじゃない。

 いったん乗るとしばらくは退いてくれない。耐えかねて、折っていた膝を伸ばし、滑り台のようにしてシャンコの体をツーッと床に滑りおろすのだが、5分と置かずにまた乗りに来る。
 これを何度も繰り返すうちにあきらめて、空き箱にタオルを敷き詰めた寝床、または私のベッドの上に陣取り、熟睡し始める。赤ん坊を寝かしつけた母親の気分で、ようやく私は仕事に集中できる。

 最近は乗せてもらうだけでは満足できなくなったシャンコ。膝の上に陣取ると、モノ欲しそうな目つきで私を見上げ、胸の辺りを前脚で「トン!」。これぞまさしく、前述の条件反射行動。「トン!」で撫でてもらえるという刷り込みがいつの間にかシャンコの中には根付いたのだろう。
 にしても、1分、いや30秒おきに「トン!」され、撫でることを強要されては、重ねて言うが、いくらわが子よりかわいい愛猫でもたまったものではない。



 仕事中のみならず睡眠中もシャンコはおかまいナシ。舌の手術をするまでは2階のリビングダイニングに閉じ込め、私は3階の自室で寝ていたのだが、術後は様子が心配だったため、トイレやベッドを3階に移動。
 元気になるまでは……と思っていたのだが、あれから数カ月たった今、シャンコは夜も私の自室で過ごしている。

 昼間の「トン!」は、睡眠中は「ギャオ」になった。寝ている私の横に来ては「ギャオ」。最初は訳が分からず、眠い目をこすりながらエサがないのか、水がないのか、トイレが汚れているのか、と思って確認していたが、どれも違う。
 「ギャオ」=撫でろ!かも?と思い、しばらく撫でてみると安堵したのか寝床に行ってくれたのだが、以降すっかり味をしめて、一晩に何回も撫でろとやって来るようになってしまった。



 それでなくとも、愛らしい見かけに反してシャンコの声は野太くデカい。取材で出会った、サイレントキャットと呼ばれる「ロシアンブルー」は本当にほぼ鳴かないというのに……。
 シャンコの場合は、鳴くより喚(わめ)くに近いのだ。 

 その大声で何度も喚かれては翌日に差し支える。頭から布団をかぶってやり過ごすようにしたところ、またも学習したのかせいぜい一晩に1~2回に減ったが、それでも朝まで熟睡できたためしはなかった。

 そんな状態が続いたある晩。酒を飲みすぎて、いかなシャンコのお呼びでも起きられなかった私は、布団から片腕だけを出してダラリと垂らしておいた。
 それが大成功!撫でてほしくなると、垂らした私の手のところに来て、頭や首を勝手にこすりつけ、満足すると自分のベッドに戻ってくれるようになった。息子には「まるで洗車機みたい」と笑われたが、お互い快適なのだから言うことなし。

 次はどんなワガママを言ってくるか、少々怖いが、それも楽しみ。仲良く同居していくため、これからも工夫していこうと思っている。

パソコンなんか叩いてんと、はよ、なでて~な

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