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小林明子

小林明子/ライター

物心ついた時から家には動物がいて、ペットというより「家族」だった。 一緒に暮らすのは大変だけど、意外な発見の連続で離れられなくなる。

第11回 「魚好き」と思ったら大間違いにゃん。

 今年もあとわずか。おせちはどうしようかなどと考えるうち、13年前、シャンコが我が家に一員になって始めて迎えた元旦を思い出した。
 その前に僭越ながら、私は「手抜き料理の天才」と家族から呼ばれている。日々の食事作りにかけるのは15~20分程度。年に一度のおせちですら数時間で作ってしまう。逆に言えば、その程度の物しか作らないのだが、「1時間でできるおせち料理」という感じのタイトルで、拙いレシピなどを雑誌に載せていただいたこともかつてあった。

 後日、それを読んだ、お料理が生き甲斐の実母は呆れ顔。熱いものは熱く、冷たいものは冷たいまま、懐石のような仕立てで日々の食事を作る彼女は、毎年のおせちも、買い出しと準備を1週間前からスタート。たっぷり3日間かけて、京都名物の棒鱈(ぼうだら)、豆煮も一から、料亭並みの5段重を何十年と作っている。そんな母にしてみれば「手抜きのおせちなんて論外」のようだが、私は彼女とは違って兼業主婦。時間が無いのだから仕方ない。

 私のおせち作りは、大晦日の夕食を片付けてから。いつものおかずの食材を少し贅沢なものにしたり、あしらいを変えたりで、3段程度のお重を作ることにしている。
 どうせ、1日の夜は鍋、2日目からは朝食と昼食は普段通りに、夜は外食か友達家族と一緒に、が恒例。スーパーもレストランも開いているし、大量に作って客を呼ぶわけでなし。昔と違って気温が高いため、冷蔵庫に入れなければすぐ傷んでしまう。
 第一、3日連続で同じものを出したら家族全員「飽き飽き~」って顔になるだろう。だから、即興おせちでも「作るだけマシ」と自分を言い聞かせ、形ばかり、1回きりのおせちを出している。

カニカマを完全スルー

 前置きが長くなったが、その13年前の年末。例年通り短時間で作れそうなおせち用食材をスーパーの買い物かごに入れつつ、ふと「シャンコにとっても初のお正月。そろそろ子猫用フードも卒業しつつあるし、オヤツでもあげようか」と思い至り、ペットフード売り場に。ズラリと並ぶ、オヤツ類の中から「たまには猫ちゃんにも贅沢。フレッシュな味わいの減塩」てな文言に何となく誘われた、真空パック入りの立派な特大カニカマを購入。これで心置きなくシャンコちゃんも初正月が迎えられると、意気揚々帰宅した。

 1月1日の朝。魚卵好きな娘はイクラやタラコばかりを皿に。タンパク質命の息子は肉のタタキやだし巻ばかりをほお張る。白味噌の雑煮ぐらいがお正月らしさを醸し出す、それこそ母が見たら怒り出しそうな元旦の食卓。息子に至っては「白味噌雑煮は苦手だから、きな粉餅に」などというリクエストまで出す“なんちゃって正月”だったが、ともかく普段よりは格段に豪華な朝の食卓に、シャンコが「何事やねん?」とよちよち近寄ってきた。

「シャンコにも“おせち”用意してるよ! お正月やし、上等のお皿に入れたげよ」。食べやすいように割いたカニカマをうるし塗りの銘々皿に盛り付け、目の前に置いてやった。
 もの珍しそうにカニカマをクンクンと嗅いだシャンコ。でも、食べてみようともせずにプイと踵を返し、むしろ息子が食べているだし巻をおねだりし始めた。「あげて良い?」と聞く息子を「人間用は塩分多いからアカン」と睨みつけ、「シャンコちゃん、上等の猫用カニカマやで~」と再度口元に持って行った。が、にべもなくまたもプイ。200円近くもしたのに……とショックを覚えつつ、チビッと味見してみたが、やはり塩分がないせいか美味しいとは言い難い代物だったことを覚えている。

 当時は、ようやく成猫用のドライフードが食べられるようになった頃だったので好みが良くわからなかったのだが、以降シャンコは、1番チキン、2番ポーク、3番ビーフ、魚は番外、との好みをはっきり打ち出した。本コラム№5の回でも書いているが、食卓に煮魚や焼魚を置いていても、クンと嗅ぐだけ。「興味なし」といった風情で立ち去る。
 一方、唐揚げやカスタードクリームの入ったパンやお菓子は袋を噛みちぎってでも食べる始末。窓の外、隣家の屋根に止まるスズメを眺めるシャンコの目付きは完全にハンター。不謹慎ながら「あのモモの肉、旨そうだにゃーん」、そう思っているに違いない。

 一般的に、猫の舌は甘みを感じにくいと言われているが、生クリームやカスタード、餡、ヨーグルト、シャンコは甘いおやつも大好きだ。最も、犬ほどではないにしても、猫の嗅覚もかなり優れているらしいと聞く。それに関しては味よりも甘い香りに魅かれているのかもかもしれないと、最近は理解している。

 そんな肉好きシャンコが日常食にしている、フランスメーカーの治療食にはチキン味があるので助かっている。が、日本のメーカーが売る一般的なペットフードは、ドライであれ、缶詰・パウチであれ、マグロ味やカツオ味などの魚系が圧倒的に主流。特に量販店では、チキンと魚を混ぜたものはあるが、シンプルなチキン味になるとかなり少なくなるのが現状だ。

 そろそろ老齢の域に入りつつあるシャンコの餌を、ドライから消化の良さそうなペースト系に変えようかと思ったのだが、同じフランスメーカーのパウチ入りセミハードフードでは、一日の食費がなんと500円以上になることがわかった。尿路結石を患ったこともあるだけに、何でも良しというわけにもいかないものの、1カ月1万5000円超! はさすがに痛いと頭を悩ませているところだ。犬用には、ドライでもウエットでも老犬用でも、チキンやビーフ味が豊富にあるのに…。

アニメに見る「猫の好物」大きな誤解

 そもそも日本では「猫=魚」がテンプレ化しているが、他国では猫は肉食系の雑食動物に位置づけられている。魚も肉も野菜も穀類も、香りと食感が合えば何でも食べると。事実、友人知人の飼い猫の中には、キャベツやニンジンを食べたがる猫もいる。
 島国の日本で、肉類を広く食べるようになったのは近代以降。逆に魚は身近にあったため、残り物として与えるエサ=魚になり、それがいつしか「猫は魚が大好物」と決めつけられるようになったのだろう。
 国民的アニメ「サザエさん」の超有名テーマソングの歌詞♪おサカナくわえたドラ猫♪が、ところ変われば♪鶏肉くわえた♪や♪豚肉くわえた♪になるのかも、と思うとクスッと笑える。

 アニメ続きでもう1エピソード。黒猫のジジが大活躍する、ジブリの人気作『魔女の宅急便』には、ジジがミルクを美味しそうに飲むシーンがある。他にも猫がミルクを飲む描写は数多く、うちのシャンコも低温殺菌牛乳特有の甘い香りに魅かれるのか、夏期はおねだりすることもある。

 が、ミルクは特に幼猫には飲ませない方が良いと最近言われるようになった。理由は、牛の乳のカルシウム含有量は、子猫の成長に必要なレベル以下であることと、猫が消化しにくい乳糖が多く含まれるので下痢をする可能性が高くなるから。さらに今や多くの猫が、栄養価の計算されたキャットフードを食しているため、その上さらに糖質の多いミルクを日常的に飲ませると肥満の原因になりかねない点などが挙げられている。
「大人の猫にはカツ節ご飯、子猫にはミルク」と信じていた、今は亡き祖母に聞かせたら、目を丸くすることだろう。

人間の食べ物が熱すぎる!?

 猫に関する言葉で撤回してほしい思い込みがもうひとつ。“猫舌”である。 
 犬、猫に関わらず、熱いものを好んで食べる動物は、実は人間だけ。それも、人間の舌は位置によって感じる温度が違うそうで、いわゆる猫舌族は敏感な舌先で食べようとするから熱く、非猫舌族は温度に鈍感な付け根部分で食べるから熱さを感じにくいのだとか。
 とはいえ、舌では大丈夫でも、その先の食道を火傷したなんて話も聞くし、医師によると、熱すぎるものを食べる習慣は胃に良くないとのこと。にもかかわらず、用意周到に熱い料理をフーフー冷ます私を、「あら猫舌なの?」。子どもねと続けたい心の声を飲み込みつつ小馬鹿にしてくださる諸兄の多い事。良い機会なので反省を促したい(笑)

 先日、シャンコは5~6年ぶりに獣医さんのお世話になった。事の顛末は別の機会に譲るとして、その際先生から貴重な話を伺った。「犬は舌の半分を失っても食べることに貪欲で、可能な限り自分の口から食べようとしますが、猫は違う。ケガや病気などで舌の半分を失うと、猫は食べること自体を諦めてしまう事が多いのです」と。

 犬種にもよるだろうが犬の舌がしっかりした造りなのに比べ、猫の舌はフランスの焼菓子「ラングドシャ(猫の舌の意味)」に象徴されるようにかなり薄い。その繊細な構造と同じように、好き嫌いの激しい猫も多く、その食事情は何かにつけてデリケートだ。

 犬もだが、毛玉を舐め取る猫は特に、地面の高さから食べると、喉につっかえて吐きやすくなってしまう。ゆえに少し高さを出した台に置いて給餌してやる方が吐きにくいと、“給餌台”なる商品が多数販売されている。これも祖母世代が聞いたら、「猫は地べたから食べるもんじゃないのかね」と驚くことだろう。

給餌台の一例

若かりし頃のシャンコ

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