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江 弘毅

江 弘毅/編集者

住まいと街の健全な「交通」が行われてこそ人がハッピーになる、 という街的生活者の住生活充実コラム。今日も「ごきげんなネタ」てんこ盛りで。

第6回 「家でやっておいしい」について考えてみる。

 極端な言い方かもしれないが、食べものは外で、つまり飲食店で食べる方がおいしい。わたしはそう思っている。
 もうひとつの側面、「外で食べると高くつく、だから家で食べる方が絶対得だ」という見方はこの際、置いておく。

 家で何回か手巻き寿司やお好み焼きをつくったことがあるが、必ずとほほ状態になったりしたのは、味では街場の鮨屋の板前やお好み焼き屋のおばちゃんにコールドゲーム負けなのが分かっていて、なおかつそれを「楽しいイベント」として実施してしまった発想がまずかったからだ。

 酢飯用の桶や巻き簀や鉄板もどきのホットプレート、あるいはたこ焼き器や焼きおにぎり器(所有していました)という道具は、実は家庭にとって「おもちゃ」の延長線上にほかならない。そしてその玩具は玩具ゆえにすぐに飽きてしまったりして、毎年大掃除の際に捨てようかどうかで迷ってしまう。そこがガスコンロの下についているグリル器やガスオーブンつき電子レンジとまったく違うところだ。
 たこ焼き器を押し入れから出してきてたこ焼きごっこをするのは、それにしか使わない針がついた棒(たこ焼き返し)でくるっとひっくり返したりやるのがおもしろいからだ。手巻き寿司より断然ライブでおもしろい。だからたこ焼きは相当上手になったし、たこ焼き屋をやるのもおもしろいかなあ、なんて思うが、やっぱり手巻きやにぎり鮨の腕は鮨屋の板前の足元にもおよばない。
 
 家で料理をして食べること。
 その楽しさは、自分の好物をつくって食べることや、仲間とわいわいやって食べることなどいろいろあるが、やはり素人にすぎないわれわれが「家でやっておいしい」というのが基本にないと簡単にコケてしまう。レジャー娯楽的感覚だけでは、家で食べることのかけがえのなさを忘れてしまう。
 
「家でやっておいしい」の代表は鍋である。
 わたしは大変にふぐ体質が強く、それこそ「てっちり」こそが大阪の「ごっつぉ」の最右翼であると思っている。そしててっちりは、食材としての「ふぐ」そのものさえ良ければ家でやっても、てっちり専門店に負けずうまい。
 大阪の黒門市場に行けば、ふぐ専門の魚屋があり、寒い季節になれば大阪じゅうのてっちり愛好家が、「家でしてうまい」てっちり用のふぐをてっさや皮の湯引きと一緒に買って帰る姿を目にする。店独自の手づくりポン酢が売っているのもありがたい。
 
 もちろんわたしもその愛好家のうちの一人で、年に1〜2回、とくに2月の終わりから3月にかけてのシーズン最後には、必ず仲間を呼んで(会費制)、黒門のいつものふぐ専門の魚屋で買ってきて家でてっちり大会をする。この季節は白子がでかいし、値段もかなりこなれてくる。今年も例年通りだった(来シーズンが待ち遠しい)。

 というか、てっちりに限っては、同じ質のふぐを専門店へ食べに行くのと黒門の魚屋で買って帰ってするのと比べると2分の1ぐらい安く上がる。
 そういえば市場で極上のカキを買って帰って、水炊きにしてポン酢で食べるのも値段感覚的にはこれに近い(味噌ベースの土手鍋はなかなかアレンジが難しいです)。
 京都で居酒屋をやってる錦市場の友人の必殺メニュー「貝ジャカ」もそうだ。
 これはハマグリだけをジャカジャカ水炊きに入れるだけの鍋料理だが、貝さえ良ければ家でして相当うまい。

 そういうことを述べさせてもらうと、「それって食材自体が高級なだけじゃないの」という声が聞こえてきそうだが、何もデパ地下で買い求めるのではない。またそういう人は最高級のイタリアのパスタを買い求めることがあっても、なぜかふぐや貝についてケチる傾向が強い。
 
 そういう方には、家でしてうまい「冷ややっこ」を薦めることにしている。
 しかしその豆腐にしても、おいしいものをつくる良い豆腐屋のものにこだわることが必要だ。さがせば大阪や京都、神戸の旧い街の商店街や市場には、これまたちょっと旧くて良い豆腐屋がかろうじてあるはずだ。漬物屋もしかり。

 また豆腐や卵に限っては、普段使っているものの倍の値段がついているデパ地下で買っても知れている。 
 こういうことこそが「家でやっておいしい」と「街歩き」とを結節させる楽しさであることに間違いがない。のんべんだらりとコンビニやスーパーに頼っているだけではダメなのだ。

 商店街でおいしいキムチを見つけたらそれを買い、中国食材店を発見したらザーサイやピータンを買って帰る。そして豆腐屋に寄って、冷ややっこ用の豆腐を買って帰る。
 白菜キムチやザーサイは細かく刻んで冷ややっこにのせるだけ、ピータンは粗みじん切りにして刻みネギとのっけて醤油をかけて食べる。
 
 日本酒もせっかくだから、専門店に行って買って、一升瓶を担いで帰ろう。 

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