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江 弘毅

江 弘毅/編集者

住まいと街の健全な「交通」が行われてこそ人がハッピーになる、 という街的生活者の住生活充実コラム。今日も「ごきげんなネタ」てんこ盛りで。

第10回 自転車に乗るようになった。普段の生活が変わった。

 社会人になって10年ぐらいしてクルマをやめた。20年以上前の話だ。
 
 初めて乗ったクルマは中古車のコロナのバン。20数万円で買ってパイオニアのカーステ「ロンサムカーボーイ」を自分で付け、窓を木目調にしたり西海岸仕様にカスタマイズしていた。波乗りをしていたからだ。

 波乗りをやめて以降は、ファッションのコーディネートとよく似た感覚で、70年代製の「いすゞ117クーペ」や「プジョー504」など、ちょっとヒネった感じの旧式のクルマに乗ったりしていた。

 感覚的にはターボチャージャー付きで馬力がいくらとか、燃費がどうだとかのスペックではなく、完全にクルマそのもののデザインや内装で決めていた。

 雑誌編集の仕事が忙しくなると、それこそクルマに乗る時間がない。加えて古いクルマは定期的にしっかり乗ってあげないといけないし、整備にも手間がかかる。
 神戸・元町の街の真ん中に住んでいたので、「自動車は要らんのちゃう」と思いクルマとの縁を切った。
 ただ通勤などチョイ乗りには、これもちょっと凝ったイタリア車の原チャリをつかっていたが、これも阪神淡路大震災後に手放した。

 それ以降は電車と徒歩、ときにはタクシーを使う。
 20年ぐらいそういう生活をしていたのだが、淡路島を取材したときに洲本バスターミナルで観光用のレンタサイクルを使って「お、いいな」と思った。
 電動アシスト自転車だったのだ。
 このパワー、楽さをもってすれば、淡路島一周も楽勝だろう。

 住んでいるところが坂の街・神戸のちょっと山側なので、ママチャリではペダルを踏んで坂を上がれない。かといってドロップハンドルの2桁の変速機が付いているような自転車への興味はない。
 そういうところにスッと入ってきたのが電動アシストだ。
 回りの知人たちを注意深く見ると、老若男女問わず結構乗っている。
 
 デザインも24インチのコンパクトでシャープな街乗りタイプから、前後ろにをチャイルドシートが付いている子育てママ用モデルまで、さまざまあってなかなかだ。

 荷物を持って坂を歩いて上るのがしんどいので、元町駅から乗って北野で乗り捨てる、1回100円のコミュニティサイクル「コベリン」をよく使っているという主婦もいる。

 電動アシスト自転車か。これはいい、とてもいい。
 インターネットで検索しまくって、あらかたの電動アシスト車動向というかどういう姿形のものがあるのかを把握して、やっぱり現物を見るのが一番だ、ということでこれもネット検索して、仕事のない土曜日の午前中、ロードサイドにある大型サイクルショップに行った。

 家から下り坂を歩くこと10分、阪神元町駅まで歩いてそこから各駅停車に乗って2駅。また徒歩5分というところにそのサイクルショップはあった。
 それにしても30台はあるだろうか。電動アシスト自転車はどれも特徴があってカッコいい。

 あれこれ見て、値段も気にしているうちに、クレジットカードを持っていることに気づいた。
「買ってそのまま乗って帰ろう」
 と、前にネットで見たモデルがこれだと確認して、「コレください。クレジットカードいけますよね?」と買うことにした。

 乗って帰りたい旨を伝えると、ハンドルの高さやブレーキやタイヤの調整、それに電池の充電が必要で、「2時間ぐらいしてから取りに来てください」と作業服を着た親切な店員さんが言ったので、近くのお好み焼き屋に昼ご飯を食べに行ったりして時間をつぶした。

 防犯登録や保険の申し込みを済まして、アシストモードの使い方や変速機の切り替えなどなどの説明を受ける。
 出発進行。さすがになかなかパワフルだ。
 モードを切り替えたり、変速機を試したりいろいろしながら、「ここを山手に上がると大安亭(おおやすてい)市場に行くはずだ」と坂を上りはじめる。
 通常モードで十分パワフルだ。
 何年ぶりだろう、大安亭市場は。漬物屋や魚屋を物色して、マグロの刺身を買って帰る。
  
 自転車に乗り始めてから、行動範囲がずっと広まった。
 元町駅近辺の駐輪場は90分無料。
 リカーショップで安くていいワインやキューバのラムを買ったり、はたまた中華料理店の焼売や豚饅をテイクアウトしたり、それまではコンビニで済ましていたものが1ランク2ランクも上がった感じだ。
 

 休日の天気の良い朝は、昼ご飯のおかず兼酒肴を入手しにスーパーや輸入食料品店に行ったついでに、ハーバーランドや中突堤まで足を伸ばして、神戸港の景色を見ながら海の空気を吸いに行ったりもする。

 電動アシストで坂が楽だし、だいたい4キロ四方ぐらいまで「活動エリア」になってきた。
 自転車は結構劇的に、普段の生活を変えてくれる。

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