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江 弘毅

江 弘毅/編集者

住まいと街の健全な「交通」が行われてこそ人がハッピーになる、 という街的生活者の住生活充実コラム。今日も「ごきげんなネタ」てんこ盛りで。

第18回 冬の愉しみ、「アテ」を作る

 冬になると、家で酒を飲むことが多くなる。
 寒くなると外に出たくなくなる「ぐうたらな」わたしの場合だけかも知れないが、温かい鍋を食べながら燗酒というお決まりのパターンのみならず、餃子専門店で生の餃子を買って帰って家で焼いて食べたり、シュウマイを蒸したり、鯖の塩焼きや鶏の手羽先の唐揚げを家でつくって酒肴にする。
 「家で飲む」すなわち「家で酒肴をつくる」回数が多くなってくるのだ。
「生を買って家で焼く」このひと手間がシアワセに
「生を買って家で焼く」このひと手間がシアワセに

 その酒肴だが、スーパーやデパ地下の惣菜コーナーのビーフシチューは赤ワインにバッチリだし、串カツや焼き魚は冷えていても十分にビールのアテになる。閉店近い鮮魚売場では生マグロの刺身が30%OFFになってたりもするしね。

 確かにここ数年いわゆる「中食」アイテムが充実してきていて、それをもっぱら「気の利いた酒肴」として滑り込ませたりもできるし、コンビニのおでんやレトルトパウチの枝豆や鮭トバを買ってきてそのままアテにするのもなかなか良いのだが、やっぱりなんだか味気ないのは、今から酒を飲む「自分のためにつくる」という「思い」のようなものが欠けているからだ。

 だからイワシやサンマ、切り身の鯖を鮮魚売場で「おっ、これ、塩焼きにしたれ」と買ってきて、粗塩を振ってガスレンジのグリルや網で焼くだけで、断然うまい酒肴になる。
「光り物」まるごと一匹。すでに口は「酒が飲みたい」に
「光り物」まるごと一匹。すでに口は「酒が飲みたい」に

 酒肴つまり酒のアテやツマミをつくるのは、だいたい行きつけの居酒屋や小料理屋で食べたものを手本あるいはヒントにしている。
箸で身をほぐしながらメバルの煮つけを食べ、燗酒をひと口。たのしいリズム
箸で身をほぐしながらメバルの煮つけを食べ、燗酒をひと口。たのしいリズム

 というより、鯛アラ炊きの煮汁のレシピや手羽先唐揚げの揚げ方は、知り合いの店の板前や料理人が目の前で調理している時に、「先に酒と水と砂糖だけ入れるんやね」とか「衣を付けていない唐揚げの方がカンタンだ」とかを実際に見て覚えて帰ったり、時には蛸につける辛子酢味噌を合わせるときは擂り鉢と擂り粉木を使うだとか、レシピに加えそんな細かいことまで聞いて帰ったりする。
手羽先の唐揚げは衣なしで、が私流。冷えたビールを呼ぶ
手羽先の唐揚げは衣なしで、が私流。冷えたビールを呼ぶ

 書店に行くと「絶品おつまみ100」とか「家呑みのための酒肴」とか、レシピ本がたくさん並んでいるが、それを買ってきてその通りにつくってみたり、ネットで検索して「クックパッド」のレシピを参考にしたりもするが、やはり街場の現場で知った料理法の方が断然にイケた酒肴がつくれる。

 というか、酒のアテの自分の好みは自分が一番よく知っているし、酒肴は主婦がつくる家庭料理の類とはちょっと違うもんな、なんて思っている。
これに酢味噌を付けたらもう最高のアテに
これに酢味噌を付けたらもう最高のアテに

 そんなこんなであるけれど、家でつくる酒肴はカンタンなものに限る。
 だし巻きが案外難しくて、この季節なら茹でたゆりねに梅肉をつけるだけのものが抜群の酒肴になることなど、なかなかに奥が深いし、そこがおもしろいのだ。
小鉢との色合いも楽しみたい
小鉢との色合いも楽しみたい

 しかしながらカンタンといっても、例えば冬の酒肴なら最上級なものに「フグの白子焼き」(水で湿らせた昆布の上に塩を多めにふった白子を耐熱食器にのせてグリルで焼くだけ)、「茹でセコガニ」(7%ぐらいの塩水でカニは甲羅を下にして入れて茹でる)などもレパートリーにあって、調理は実にカンタンだがなかなか「やるときはやる」というか「イテマエ」精神で楽しんでいる。
昆布と白子。冬のおいしい素材と色
昆布と白子。冬のおいしい素材と色

 そうなってくると、市場の鮮魚店や精肉店を覗いたり、スーパーやデパ地下の鮮魚や鶏のコーナーについ足を運んだりもすることになるし、瀬戸物屋さんの店頭の和食器セールで鯖の塩焼きにいい和皿を見つけたり、プロ料理人のご用達の道具店では、湯豆腐用の豆腐すくいやタレをつくる時の片口が気になったりもする。

 究極の「街と家のコネクション」は、わたしの場合「カンタン酒肴」なのである。
カンタン酒肴

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